3000年後に人類に助けられる宇宙人が、人類に文字という武器を提供し、新たな思考体系を植え付ける。主人公は、その思考体系を獲得し、それを受け入れながら日常を過ごす。 たとえば漢字は一字一字に意味がある。それが逐次的に連なったり発音されたりするのが人間の言語だけれど、本来の、その図像が意味をそのまま伝えるという字の役割を強化していくと、あらゆる事象をその図像で示せるようになる。本作で出てくるタコ型宇宙人ヘプタポッドの文字は、そういうものだと思う。 ふつう経験は過去から未来へと進み、記憶・メッセージは共時的に、空間的にしか伝達しない。これが通時的に伝達しだすと、時空間のすべての事象が現在の経験になりうることになる。 以上の文字と経験についての話のアナロジーが、きれいにSFに昇華されたのが本作だった。文字は時制がなくなり、未来と現在の経験は溶け合う。それは非人間的で、つらく、重いかもしれない。いや、今の人類から見れば怖いだけで、実はなんてことないのかもしれない。主人公はどう感じたのだろう。 映画としても見ごたえがあった。畏怖の感情をともなう想像力は好きだ。

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