想田和弘は、台本やナレーション、事前の構成をできるだけ置かず、目の前で起きる出来事を長時間観察し、その場で発見された関係や出来事から映画を組み立てる「観察映画」の作家です。

特徴的なのは、撮影前に「何を描く映画か」を決めすぎないことです。対象への取材やリサーチもあえて限定し、撮影者自身がその場に身を置きながら、カメラを回すことで世界を知っていく。インタビューも質問と回答を整理して情報化するというより、その人の沈黙、逡巡、身振り、周囲の環境まで含めて記録します。

また、説明的な字幕や音楽、ナレーションを極力排し、長回しを多用するため、観客も「作者による解説を聞く」のではなく、その場所に居合わせて自分で観察することを求められます。つまり、現実をあらかじめ設定した物語へ押し込むのではなく、撮影という単純な働きかけを通して現実から返ってきたものを受け取り、編集によってそこに潜んでいた構造や物語を発見していくスタイルだと言えます。

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